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今日の文句

               by 松 本 直 樹

1. 佐藤孝行氏の大臣就任と辞任

(1997年9月)

 佐藤孝行長官の辞任が確実視されていますが(少なくともうちで取っている日経と朝日の1997年9月20日(土曜日)の朝刊は、いずれも、佐藤氏が月曜日に辞任することが確実であるという趣旨の見出しです)、佐藤氏本人の言葉として伝えられるところでは、辞めるなんて一言も言っていません。“月曜日に首相に会って決める”と言っています。本人がこう言っているのに、辞任すると決めつけて報道しているのは、どうしてなんでしょうか? 願望の表現なんでしょうかね? でも、報道の仕方としてどういうものでしょうか?

 勿論私は、佐藤氏の大臣就任に大反対です。橋本首相の言葉を一部借用して言えば、「一度政府高官として収賄をした人は、未来永劫、大臣になどなれなくて当然」「政治家としての将来など、無くて当たり前」だと思います。

 不思議といえば、佐藤氏が辞任するのと首相の方から罷免するのとで、橋本首相の責任に違いがあるように言われるのも不思議ですね。橋本首相の責任は、佐藤氏を任命したこと自体にあるはず。それも、佐藤氏の問題点を重々承知で熟慮の末に決めたのだとおっしゃっている。佐藤氏が長官でいることを許さないのなら、収賄議員を大臣にするという「熟慮」と「決断」をするような首相もいけない、ということになるはず。これは佐藤氏が辞任しても、しなくても、いずれであっても全く違いがないことです。

 そもそも、何でもっと早く罷免にしないんでしょうかね? 佐藤氏はこないだから「絶対辞めない」と言っているんだから。ちなみに、日本国憲法68条2項は「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」と規定していますから、罷免するのに理由は別にいらないはずです。もっとも、一応は「任意に」とはあるものの、本当に全く自由なのかは、解釈の余地があるのかも知れません。佐藤氏は、確かに、任命されてからは悪いことをやったわけでもなく、問題となっている点については橋本首相は「熟慮の末」に任命したんですから、これで罷免するというのは勝手と言えば全く勝手な話で、そんなコトしても良いのかしら? と思わないでもありません。月曜日のサシでの会談では、そう言って粘ったりして。

 (9月22日追記) 案外素直におやめになってしまいましたね。私の予想は当たらなかったようです。すいません。ついでに書いておきますが、朝日新聞の佐藤孝行特集コーナーはなかなかの力作です。


2. 新聞協会と三輪教授の戦い(再販をめぐって)

1998年2月18日(水曜日)、22日に少し改訂

 大変に面白い論争のページを見つけました。 東大経済学部の三輪教授のページ です。日本新聞協会って、本当にこんなにすごい言論統制をしているんですね。新聞を含む著作物について再販価格拘束が例外的に許容されていることを見直そうという動きがあること、それに対して新聞各社が一斉に反発していること、などは一応は知っていましたが、この三輪先生の文章にあるほど強烈な統制をしているとは知りませんでした。

 現状の新聞販売には、とてもヘンなところがあるのは確かです。大都市での配達は、配る距離が短くてすむからコストが少しですむのが原因だと思いますが、異常な熱心さで勧誘に来ます。そして、一定期間の購読を申し込めば、洗剤やらビール券やらが貰えます。こんなことをするくらいだったら、値引きをすればいいのに、そうは出来ない。再販があるから。そうしてみると、再販が許されているのは、極めて不合理に思われてきます。

 でも、違うことも思いついてしまいます。再販がそんなに良いなら、新聞社は「直販制」にしたらどうでしょう? つまり、各購読者との間の定期購読契約を、購読者と新聞社との間の直接契約にするのです。それで、各販売店は新聞社からの委託で配布する業務を行う。もちろん、購読の直接契約をするにあたっては、各販売店が新聞社の代理をする。これなら、名目以外はほとんど現状と変わらずに「直販制」がとれるでしょう。直販制なら、購読価格を新聞書が決めるのは当たり前の話となり、再販云々の問題は生じない。……どうです、良い考えでしょう、ナベツネさん(読売新聞)?

 もっとも、こういうのは、再販を逃れるための脱法行為で認められない、と議論されるのかも知れません。しかし、この「直販制」は、脱法とばかりは言えないのではないでしょうか? この構成は、経済実態に適っているようにも思えます。言い換えれば、新聞も含めて、著作物の現在の流通形態というのは、本当に再販なんですかね? ということです。

 新聞販売店による販売は、果たして、自分自身による販売として、販売価格を小売店が自由に決めるべき販売(新聞社から見れば再販)なのか、疑問ではないか、ということです。というのは、普通の商品についてメーカーから流通へ売却をしたというのは、それは売り切りをした場合のことですよね。そして、小売店が自分で売れ残りのリスクを負担するからには、販売価格も自由に出来てしかるべき、というのが再販の趣旨だと思うのです。現在の通常の著作物の販売は、委託制で、返品が自由です。これはむしろ、直販をしているに近いのでは? 別の言い方をすれば、「直販制にしたよ」という言い逃れが認められても良いくらいに、現状のままでも、再販価格を拘束しているのがいけないとは言えないものではないか、という気もするのです。

 私にはどうもよく分かりません。でも、少なくとも確かなのは、こうした議論をする機会を奪っている日本新聞協会の言論統制が不当であることです。


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