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サミットのニュースリリースにおける誤解

松 本 直 樹

  エキシマ・レーザーを使って近視などの治療を行う装置(レーザー光のエネルギーで角膜表面を削って屈折異常を矯正するというものです)に関する特許の侵害訴訟の被告代理人をやっているのですが、先々週(1月29日)、東京地裁で勝訴判決(被告のニデックの代理人ですので請求棄却判決)を得ました。この判決について、原告のサミット・テクノロジーがニュースリリースを出していて、これがちょっと面白いのでご紹介します。なお、訴訟の内容や判決についても、追ってご紹介する予定です。

  面白いのは、次の下りです。「However, Summit believes it presented a strong infringement case to the Tokyo District Court and intends to appeal the decision to a higher court with more experience deciding patent matters.」

  higher court へアピール(控訴)をする積もりだ、というのはいいとして、しかし with more experience 云々というのは私はしばらく何のことか分かりませんでした(どこに掛かっているのか分からなかった)、。よく考えたら分かりました: higher court に掛かっているんですね。つまり「特許事件を決する経験をより豊富に持っている上級裁判所へ控訴する積もりだ」と言っているわけです。これはどうやら米国のFederal Circuit のことを考えているんですね。

  しかし東京では、東京地裁も専門部ですから(29部と46部、1999年4月からは47部もできました)、この表現はあんまり当たっていません。米国の場合は、確かに、CAFCは特許事件を集中的に扱っていますから(他の事件もありますけど)、地裁に対比してこう言うことが出来ますが、それとはちょっと違います。むしろ、東京高裁の専門部の方が他の事件の配転も受けており、地裁の専門部の方が専門性が高いです。これは結局、米国人に時に見られる、外国の状況を正しく認識しようとせず、根拠もなく米国と同じだと考えてしまう態度のように思われます。米国だって、Federal Circuit が出来たのは昔のことではないのにねえ。むしろ日本の裁判所(地裁)に専門部が出来た方が大分古いですよね。


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