平成11年5月13日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官 中村貢 平成10年(行ケ)第92号 特許取消決定取消請求事件 判決 大阪市中央区北浜4丁目5番33号     原告住友電気工業株式会社     代表者代表取締役 塩谷 章     訴訟代理人弁護士 松本直樹 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号     被告特許庁長官          伊佐山建志     指定代理人高倉成男     同    松野高尚     同    後藤千恵子     同    廣田米男 主文  特許庁が平成9年異議第70913号事件について 平成10年1月29日にした取消決定を取り消す。  訴訟費用は被告の負担とする。 事実 第1 原告が求めた裁判  主文同旨の判決 第2 原告の主張  1 特許庁における手続の経緯  原告は、発明の名称を「ヒューズ用導体」とする特許第 2529364号の特許発明(昭和63年10月13日に 出願、平成8年6月14日に特許権設定登録、以下「本件 発明」という。)の特許権者である。  訴外田中電子工業株式会社等は、本件発明の特許につい て特許異議の申立てをし、特許庁は、これを平成9年異議 第70913号事件として審理した結果、平成10年1月 29日に「特許第2529364号の請求項1ないし6に 係る特許を取り消す。」旨の取消決定(以下「本件取消決 定」という。)をし、同年3月2日にその謄本を原告に送 達した。 2 本件取消決定の理由  別紙本件取消決定の理由の写しのとおりである。 3 本件取消決定の取消事由  (1) 本件発明の特許請求の範囲は、別紙本件取消決定の理  由【3】の[3-1]の項において請求項1ないし請求  項6に記載されたものとして認定されたとおりであつた。  (2) 原告は、本件決定後に本件明細書の訂正(以下「本件  訂正」という。)をすることについて審判を請求し、特  許庁は、これを平成10年審判第39061号事件とし  て審理した結果、平成11年2月4日に「特許第252  9364号発明の明細書及び図面を本件審判請求書に添  付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認  める。」旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)を  し、同年3月17日にその謄本を原告に送達し、本件訂  正審決は確定した。   本件発明の特許請求の範囲請求項1ないし4は、別紙  本件訂正審決の理由の1の項の写しのAないしDのとお  りに訂正された。  (3) したがつて、本件発明の技術内容は、本件訂正後の特  許請求の範囲に基づいて認定されるぺきであるのに、本  件取消決定は本件訂正前のそれに基づいて認定したもの  であるから、取り消されるべきである。 第3 被告の答弁  原告の主張事実は認める。 理由  1 原告の主張事実は、当事者間に争いがない。   上記事実によれば、本件取消決定は、本件発明の技術内容  を、本件訂正後の特許請求の範囲に基づいて認定すべきであ  る(なお、請求項5及び6は、請求項4を引用する形式の記  載であるから、これらに係る発明の技術内容も、本件訂正後  の請求項4の記載を前提とした請求項5及び6の記裁に基づ  いて認定すべきである。)のに、本件訂正前の特許請求の範  囲に基づいて認定したうえ、本件発明の新規性を否定したも  のであるから、上記認定判断は違法であるところ、この違法  は本件取消決定の結論に影響を及ぼすことが明らかである。  2 よつて、本件取消決定の違法を理由にその取消しを求める  原告の本訴請求は、正当であるから、認容することとし、訴  訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61  条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日・平成11年4月20日) 東京高等裁判所第6民事部   裁判長裁判官 清永利亮      裁判官 山田知司      裁判官 宍戸 充