By 松本直樹
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(御連絡はメールで、上記のホームページの末尾にあるアドレスまで。)
以下に、09年のコメントを書きます。いただいたご質問への返事のメールと、私の掲示板での議論を、いずれもここに掲載する予定です。
なお、以前のもの等は以下のリンク先にあります:
04年分(メール分)
弁理士能力担保研修の掲示板(04年分)
05年分および06年分のファイル
弁理士能力担保研修コメント07年分
弁理士能力担保研修コメント10年分
弁理士能力担保研修コメント11年分
------------------------------------------------------------ 日付: 2009/05/19(火) 18:12 件名: Re: HP3からのメール Kさん、メール(Sun, 17 May 2009 22:36:32 +0900付け)をありがとうございました。松本 です。 | 昨日の御講義、有難うございました。宿題の解答(訴状起案例)を頂戴し | 自分の案と比べました。起案例の訴状提出先は東京地裁民事部でしたが、 | 私は「岡山地方裁判所御中」と記載しました。民訴の関連条文を再度探し、 | 民訴4条1項では岡山地裁だが、6条1項によれば岡山地裁に近い高裁は | 広島高裁だから、民訴6条1項2号の「大阪地裁」が正解かと思いました。 | どこで間違っているのでしょうか? 間違っていません。東京地裁と大阪地裁は、どちらもOKです。岡山だと ダメですけど。 6条で、「前二条の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有す べき場合には、その訴えは、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属 する。」となるので、それぞれの号での規定について、東京か大阪が専属に なります。なので、岡山は除かれます(大阪になって)。 でも、元の方で競合している分については、結果的にも競合になります。 「前二条」でもって東日本の裁判所の管轄なら東京地裁、西日本なら大阪地 裁となるので、両方があるなら、結論としても両方です。 それで、大阪でも良いのですが、原告側の代理人が東京ですので、その都 合で東京にしておく、というのが参考起案の趣旨です。大阪でも間違いでは なく、また、大阪の方が原告有利な傾向があると考えて(たとえば、です)、 わざわざ大阪に提起する、というのもないではないです。 ・2009年5月19日(火)18時11分50秒 ・松本直樹
09年の宿題は、これまでとは違ってちょっと複雑な事案です。でも、間接侵害の方を相手にするわけではないので、そう難しいというわけではありません。なお、番号は、登録番号の末尾です。
1. 1
平成21年4月の日付になっている。問題文を良く読む、時効になってしまうよ。
趣旨に製品名を入れている。目録の形の方が実際的な面がある。
被告製品の構成の誤記。「上炊きあげた飯……」
被告製品の構成としてまず書いてあるのが、部分的でしかない。が、先に出ている被告の構成は、争いのないところだけなのか? そうなら、一つのアイディアではあるが、誤解されるようにも思う。
鑑定書が甲5。報告書の言うのとは違う状況? 報告書では、鑑定書を渡してくれたわけではないように思う。
「……認める」としている。」とまで言えるの?
物件目録はないのも、この趣旨の記載なら理屈は通る。それでも、物件の説明書はあった方が良さそう。
2. 2
21年4月になっている。問題文を良く読んで。
訴額、とかの欄は付けてもらうのが題意だが、まったく省略でよいようにも見える問題文なので、まあ良いか。
1億の請求、疑問。
被告について、「との構成要件を有するから」というのは、疑問。被告のものの実際が要件を満たすこと、が重要。
3項での5%での賠償を請求する計算に結論的にはなっているが、その中で(3)で利益率が10%とも書いてある。分かりにくい。しかも単価が「○○円」となっているのはどうして?
3. 9
日付が21年。
訴額が2500万円。書こうとするのはよいです。
目録を、フィルムとして作ったのではマズイ。
損害額の主張が、内容的にはもっともだが、ロジックに疑問。
警告で故意。なるほど、という面もあるが、実際的に不要ではある(過失主張の上での議論なので、問題はないが)。
証拠が付いているが、それは題意には合わない。また、綴じ方注意、裁判所のファイルの仕組みに合わない。
4. 4
良くまとまっている。
金額欄がないけど、これは承知?
細かく読むと、不自然に見えるところもあるにはある。「包装体から出ている非透水性フィルムの一部を容易に抜き取ることができ、」とあるが、一部だけを抜き取ってしまうというわけではないですよね?
5. 0
指示の趣旨は、自分のアドレスは実際のものを書くことのようですよ。
対比、素晴らしく丁寧です。
主位的に被告利益、ですね。難点はありますが、これなら問題はないと思われます。
経過について、ここまで書くのなら、自分の主張との関係も書くと思います。まあ、これだけでも十分に分かるとも思われますし、また反論のない段階ではこんなものかも知れませんが。
よって書きでは金銭請求の性質も書くのが普通です。
6. 0
61年6月〜、とはなぜ? そのために、金額も1400万円。警告の時点のようですが、その前の分も請求対象に出来ます。過失推定がありますから(米国はちょっと違う)。
作用で海苔にも言及している。検討の余地あり。クレーム要件では海苔がないので。
この構造のものを売っているのを認めているのは、被告ではなくて、乙山フィルムの方ですね。
7. 0
大阪地裁。理屈ではあり得るし、被告の近くではある。また、有利かも知れないが。
請求が、金○億円。期間が同様。
特許の方の効果が詳しい。海苔云々も。これだと同じと言えるのだろうか? どれが良いとも微妙ではあるが。
目録がない。
交渉経過、で、指摘しているのが、認識している、とのことだが、これは、損害賠償のためか? 過失推定なので、積極的に必要ではないし、実際上はますます必要性は乏しいものではある。
8. 9
請求の趣旨で名前で対象を記していて、目録無し。一貫はしているが、実際上の疑問はある。
予備的、としていて、良くお考えと思います。この必要はなさそうですが、こういうなら、5000万の請求は難しそうだが、承知の上ならOKと思います。
9. 9
1300万円。期間の見間違えですね。
趣旨中で「点字」の誤字。
証拠が、通知等のやりとりをリストしていて、リアル。しかし、文中で交渉の経過として警告したことだけをいっているのは、趣旨が明らかでない。
10. 7
自然に、良くまとまっています。
つまらない誤字ですが、2500円、となっています。
11. 6
2600万円の請求。月数の計算が違うようです。
分節が、ちょっと変えているのは実際的ではない。問題ない範囲とも思うが。
好ましくは、というのを括弧書きながら入れているのも同様。
「特許発明の上記構成A.と同一」等というのは、少しヘン。
被告の利益率によっている(10円)。無理と見える。また訴額はそちらだけ。差止の分は? (今回は省略でも良いところをお書きになっているのは良いのですが)
経過が詳しいのは、実際的とは思う。ただそれなら、言い分を書くだけではなくて、主張もあった方がよい。それがないのに丙山フィルムの主張をここまで書くのは、目的に沿わないように思われます。
12. 7
読めない箇所(行)があるのは困ります(インクジェットプリンタの不具合のようです)。
1項で利益額、というのは、違う。500万個で10円、としているが、個数の根拠も不明でしかも違う。
それに加えて3項、というのは、違う。5円というのも不明。1項と3項の関係には議論はあるが、単に並列で加えるのはどうもマズイ。
13. 5
日付が21年になっている。問題を良く読むように。
捺印が、リストとしての名前の所にあるように見える。上の方に捺印したら?
訴額が2400万円で、金銭請求分だけ。
イ号の構成を普通の文章で書いた上で、分節しているのはよい(必要とまでは言えないが)。しかし、分節において、妙に抽象化しているように見えるのは疑問。
期間を約2年、と丸めているが、わざわざそうしない方がよいように見える。はっきり書いてあるのだから。
実施料を5%とすると、としているが、根拠が出ているので、それで主張するべき。
目録がない。
14. 7
訴額は、**表示。問題文からすすると今回はこれでも良い。
作用効果、シンプルに書いている、十分です。
被告について、aはクレームのままでちょっと不適切だが、b以下は具体的に被告の物自体を説明していて適切。ただし、フィルム名の言及などは、違う方向の考えもあり得るが。
13ヶ月、というのは計算違い。
ライセンシーの陳述書の立証趣旨は、被告の侵害行為なのだろうか? 損害額では?
15. 0
訴額は2500万円で、差止分はない。
廃棄請求の対象が具体的で興味深い。ただ、その廃棄請求の理由付けは、無理がある。
遅延損害金が60年1月1日から起算。その根拠は? よって書きでは、送達の日の翌日から、になっているので、不整合です。書く不法行為の日から、なら可能性はあります。
16. 2
なかなか良い。
誤記が少し。請求の趣旨だけ1億円(原因の方では、2500万なのに)。飛行製品、とか、結語の所も。
17. 2
請求の趣旨では、商品名を書いてある。目録が付いているのに。これなら、目録と言うよりは、物件説明書にするべき。名前だけの問題だけど。
妙なところで「します。」などとなっている。大した問題ではないですが。
良くできていますが、細かく読むと、フィルムもクレームに記してあるのに、効果として「直接フィルム等で包告しても」と、あたかも中身だけを対象としているかのように説かれていて、噛み合っていないようにも思われます(これは多くの人に見られたのですが)。
18. 9
間接侵害の分の請求も考えられるのはご指摘のとおり(カバーレターで)、でも出題に沿えばよいです。
【当事者の表示】、というのは面白い。括弧書きの工夫で見易くできる点がある。この実例は見たことがないが。
「原告代表者」等の表記はちょっと不適切ないし不足。「代表者」と「代襲取締役」は肩書きとして不可欠。原告とか上記とかを入れるのは好みの問題だけれど。
分節が、手を入れすぎでは。無用の争点を作る可能性あり。
甲7の作例、現実的です。
19. 6
当事者名のリストとは別に名義人の表記があった方が普通です。
請求額2600万円、13ヶ月というのは月数の計算間違いでしょうか? その上で利益率の10%によっていますが、これだけというのは無理があります。
20. 2
【】括弧の使い方、面白い。例を見たことはないですが、問題はないと思います。
請求の趣旨の金額、二つに分けてある、ヘン。そもそも、2項と3項を並べて、両方を請求している、もっとヘン。
分節が、単に切ってあるわけではない。物なのに、動作的に変えてある、問題。異論が付くだろう。まあ、本件の難しいところではあるが。
サラダオイルの該当性の説明、そういうことではある。教室事例ではヘンになりやすくて難しいけど。
物件目録、と書いてあるのに、無い。
21. 4
自分のアドレスは現実のものを使うのが題意です。
目録がないです。
4800万円の請求、月数を概算にしていますが、そうでない包が問題文通りです、その上で10%ですが、単に10%の請求というのは無理があります。
良く書けていると思いますが、上方の方と同様に、フィルムもクレームに記してあるのに、……という問題があります。
被告の方の構成として、乃至、という言い方になるのはヘンです。実際の被告のものを表現するべきです。
22. 9
金額が空欄。
証拠が、実際のものを付けてくれている。綴じ方は気をつけて。
初めの方の被告の方の説明が、特許の方によりすぎている。被告のものその物を表現するべきです。
23. 2
大阪地裁ですか。それもあり得ます。
乙山フィルムも被告ですか。出題の指示には従って下さい。しかし、請求原因のドラフトはよく考えられていると思います(でも、難点あり)。これの場合には、条文へも言及した方が実際的とは思います。
乙山フィルに対して請求するなら、差止対象は、丙川フーズへの販売だけではないでしょう。主張すべき侵害の事実は、その具体的事実ですが、差止対象は、同一性の範囲に及んで良いです。
添付書類に、委任状や資格証明も要ります。
被告のものを、クレーム通りに書いたのではダメ。
目録がないです。
24. 8
正本は片面の方が良いみたいです(裁判所のファイルの都合で)。
経過を書くのも良いと思いますが、「……回答があった。」で終わっているのは不思議。そこにもとづいての自分の側の主張があるべき。
請求の趣旨でも金額も書いたらよいのでは? ○○になっているけれど。
25. 6
補佐人で良いの? 指示によれば(少し不明確ですが)、弁理士も代理人です。
請求の趣旨の金銭請求の項が尻切れトンボです。
「構成要件に分説」とは余り聞かない。「イ号」も、言うのだけれど、近頃こういう風には書かないように思う。
被告利益での請求、難点あり。また、なのに500万円の請求。計算ミス? 個数が5000万になっていて、それの1割なのでしょうか。重ねて計算間違いのようです。
証拠として警告書を付けるなら、文中で経過として言及があった方が自然です。
26. 2
1億円。その計算中、25ヶ月で1000万個とされているが、なぜ? 加えて、被告利益での請求を採用しているためにこうなっているが、難点あり。
趣旨中で「訴上」の誤記。「送達の即日から」も誤記?
結語(よって書き)の所では、請求の趣旨記載の、とするのではなくて、具体的に書いて、更に法的性質も書くのが普通です。
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